2020.06.21
とある10の物語
-物語が生まれるノートに記す
うつくしき表現者たちのそれぞれの物語-
野原さん
星の民
濃藍の夜空に瞬く無数の星たち
星はひとつひとつの意思であり
私たちの数だけ瞬く星があることを
彼らは識っていた
静寂と調和のなか
決して豊かでは無い作物に感謝を捧げ
生きることを楽しんでいた
彼らは言葉を持たない
そのかわり
動物の毛と繊維を針と糸の代わりにして
植物から採れる繊維を織り
藍を染め重ねた布地に一生の祈りを込めた
私たちは本当は識っている
最も重要な言葉は形を持たないことを
彼らは教えてくれる
一針のなかに響く星屑の音を
2020.6.11
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